大津波被害の地域復興での緊急の住宅対策ー高層住宅の早期建設
 2011.03.27  2012.8.2up サイトマップ    
● はじめに
 今回の津波は、対策の考え方を基本的に変えなければいけないことを示しています。これまでの数メートルしか対処できない防波堤は効果はあるものの限界があります。十メートルを超えるような津波に耐えるよう、お金を最も効率的につぎ込まなければいけません。
 これまで大きな津波被害のあと、高台に住むことが大事と分かっていても、ついつい便利な低地に、高い密度で家が造られてきました。これから対策の重点は低地のシェルター整備ということになりますが、大がかりなものになり、多額のお金がかかります。
●鉄筋コンクリートの建物
 今回の津波で特徴的だったことは鉄筋コンクリートの建物の躯体が殆ど無事で、避難場所にもなったことです。そこで今後の津波対策の基本は、安心して避難できる10階以上の高層の建物を低地のあちこちにつくって避難しやすいようにしておくこととすべきです。避難距離が短いので、津波が近くになってからでも逃げられます。津波で低層部分がやられても、建物の相当の部分が残りますから、復旧費用も少なくなります。また、食料、生活物資など上の階の人の分が確保でき、何もない状態とは全然違います。 岩手県山田町の被災状況 仙台市南東部付近の被災状況
 避難距離300mの範囲内でこのような集合住宅を建てれば、住宅建設と防災を兼ねた効率的な方策となります。
 緊急避難が難しい病棟や老人保健施設を5階以上に設置することも必要でしょう。電気室やエレベーター制御機器もできるだけ高いところにおいた方がいいでしょう。送電線を山から、高層住宅から張り出した電柱をつなぐように配線できれば、電力の回復も早くなります。

津波避難丘(千葉県鴨川市前原)
 防災誌 「元禄地震」 発行2008/3千葉県より

 慶長地震1605年の大津波の教訓に住民が築いたもの。元禄地震1703年のとき、この丘に逃げ込んだ人は助かったという言い伝えがある。丘の上には日枝神社が祀られ、また元禄津波犠牲者の供養碑が多数。
 海岸から百メートルほどのところに。
●実効性
 国の大震災復興構想会議提言、や宮城県復興計画では住宅の高台移転を方針としています。しかし、リアス式の地形では高台の土地もあまりありません。平屋の仮設住宅が低地にあったら皆敬遠するでしょう。仮設住宅の建設と平行して、津波被災地域に、高層住宅建設を進めればその分住宅難の解消が進みます。また、安心して住めます。また、仙台市海岸地域では、高台は遠くにしかありません。高台全面移転の問題点
*** 9月に国の復興対策本部から復興の基本方針が出され、この中で高台移転は原則でなく、手段のひとつとなりました。また、「中高層の避難建築物の整備」が示されました。これで復興計画作成に現実味がでてきました。でも遅い。***
 一方、鉄筋コンクリートの建物は、コストが高く、長く使えるようにしないといけません。
 そこで、一戸あたり広めの高層住宅にして、当面一戸に複数家族が応急的に暮らし、その後住宅事情が良くなったら普通の住宅にしていくことにより、長期に住環境が確保されます。
●火災対策
 大津波で港の石油タンクが破壊され、広範囲な火災を引き起こしたことから、津波で破壊されなくても火事で被災する可能性があります。これはガソリンスタンドのように厳しい安全基準とすれば安全になります。津波で流された自動車が建物のところで発火し、火事になったところがあり、流された自動車などがそばに来ないような措置も必要です。建物が火事になる可能性があるので高架道路のようなものがいいという意見がありますが、実現性がどうでしょうか。 
●緊急の整備
 避難施設を兼ねた高層住宅は国の債務で建設し(都市再生機構の業務とすることもあるでしょう)、家賃は通常の住宅になったときにもらうようにすれば、公的な負担も相当減ります。
  高層住宅の建設には比較的広い土地が必要ですが、津波によってすべて流されてしまった地域では、用地補償を後回しにすることで、建設の早期着手ができます。
 建物の高さをたとえば12階とかに地域ごとに決め、窓枠ないし、ベランダなどで統一の色を使うようにすることにより、街の景観が確保されます。
  被災地では住宅と産業施設の建設とそれにかかるインフラの整備が最優先になります。
土地かさ上げとの関係
 被災地は地盤地沈下していて、かさ上げの検討がされています。それを待っていたのでははじまらないので、現地盤高から1.5m程度1階の床面を上げて、建物を道路から3m以上離してつくればいいのです。斜路が設置できるので、大切なバリアフリー環境が確保できます。
●まとめ
 以上、津波の恒久対策として、一定の避難距離て、で国が負担するなど高層の建物を市町村が計画し、仮設住宅整備と平行して緊急に建設し、大津波に耐えられる街造りを早期に進めることが望まれます。
 山田町の場合 大槌町の場合
東海・東南海・南海地震に備える
 今のところ三陸海岸でない地域は大津波対策があまり考えられていないようです。しかし今回の巨大j地震から、トラフの沈み込む地域近くではこのようなことが起こることが十分考えられます。江ノ島近くの海岸
 .現在、2〜3m程度の津波が想定されていますが、津波の規模が大きくなると被災区域が急拡大します。Google Flood Map参照。 過去の伝承を見るともっと大規模な津波に耐える街にしなければいけないことを示しています。
 従って、津波に耐えられる高層住宅の早期整備は全国的にも進めなければならないでしょう。

●日本学術会議「巨大災害から生命と国土を護る」連続シンポジウム
 2012/1/18の第二回開催で、早稲田大学伊藤滋特命教授が津波避難ビルの早期建設を提案されています。 
●地震学者 東京大学地震研究所 キ司 嘉宣(つじよしのぶ)准教授著書
 「千年震災」ダイアモンド社 の中で、漁業の街で家を建て直す場合、5階建て以上の鉄筋コンクリートマンションにすることを勧めておられます。